会社の税務会計の顧問をしておりますと、社長から
「先生、できる限り税金は納めたくないので節税をよろしくお願いします。」
と言われることがあります。
その度にこの社長さんは自分の会社を大きくしたくないのかなと考えてしまうことがあります。
そしてこういう問答が始まります。
当事務所:「社長はご自分の会社をどうされたいのですか?」
社長: 「そりゃあ、会社を大きくして人もいっぱい雇って自分も社員も豊かになりたいですよ。」
当事務所:「それはご立派なお考えですね。では社長の考える会社が大きくなるって具体的にはどういうことなんでしょう。」
社長: 「それは、がんばって自分も社員もいっぱい仕事して、儲けて自社ビルなんかも建てて規模を拡大するということですよ。」
当事務所:「すばらしいですね、社長。でも儲かるんですよね。」
社長: 「そりゃあ儲かりますよ。そこは自信があります。」
当事務所 「社長、儲かって利益が出ると税金は必ず発生しますよ。」
社長: 「だからそこを先生にお願いしたいんですよ。儲かるんだけどあまり税金は支払いたくない。
税金なんて多く払っても何もいいことなんか無いじゃないですか。」
それならって言うことで、そんなに必要でもないのに大きな役員保険に入ったり、
その他いろいろな俗に言うところの節税商品なんかを買ったりするわけです
その結果どうなるか、それは納税額は減ります。
なぜなら必要経費(法人の場合は損金といいますが)としてお金が
バンバン会社から外に出て行くわけですから。
しかし、こういうことを続けた会社の決算書はどうなっているかといいますと
設立した当初とほとんどかわらないわけです。会社として大きくなっていない。
成長していないということなんですね。
つまり何が言いたいのかと申しますと、過度な節税対策なんて全然必要ない。
数字の上から見た会社の成長というのは
これを毎年毎年コツコツと続ける必要があるわけです。
こういう会社を金融機関から見ると
「あ、この会社は利益も出ているし、しっかり納税もしている。財務も安定しているし必要なときには融資をしても大丈夫だな。」
という、信用・評価がもらえます。
この信用・評価こそが会社の成長には無くてはならない必要不可欠なものです。
逆に言うと利益も出ていない税金も支払えない会社は、成長のできない「融資に値しない会社」と見られてしまいます。
今の日本の法人税法では、年間の利益が800万円までの場合は、
地方税もあわせておおよそ23%くらいになります。(昔にくらべればずいぶん低い税率になりました。)
これから創業を考えておられる方はもちろんのこと、
現在事業を営んでおられる社長の皆様に申し上げたいのは、
あまり節税ばかりに目を向けず、税は会社を成長・発展させるためのコスト、
必ず発生するものと考えていただきたいのです。
実際に今までもいろいろな社長さんを見てきているのですが、
節税ばかりを言う社長の会社は不思議なことにあまり大きくならないんですよね。
であるならば、社長にはどうやったら納税するほどの利益を出せるのかを考えていただくのも面白いのではないでしょうか。